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2018年5月19日 (土)

ECG-283:answer

   70才代男性です。ACSでの搬入でした。

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   II, III, aVF でのST上昇と、I, aVLでのST低下で、ACSは確定ですね。

  P波が、不安定ですが、今回の主目的ではないので、AV-block追求は省略。

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は、ST上昇。虚血部位の主体。

は、ミラーイメージとしてのST低下です。

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Ecg283erweb

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  冠動脈造影図を提示します。

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Ecg283cagpci

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 主病変は、#3の完全閉塞で有り、右室梗塞との関与は低そうです。しかし、V4RST上昇があります。この解釈は、悩ましいですね。

   PCI後に、側壁まで栄養する大きな4AVが描出されています。すごく大きな支配領域を持つRCAだったんです。

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  さて、問題の〔二段脈〕です。PCI後のICUでの出来事です。

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 Rule of bigeminy(二段脈の法則)が、あります。

  二段脈は、いったん始まるとなかなか止まりません。正常⇒PVC⇒正常⇒PVC⇒正常⇒PVC・・・と、頑固にPVCが出現するパターンが一定の規則内に留まります。数は多いけれど、実害はない。Holter-ECGで、全心拍数の10%以下くらいで、二段脈でPVC数千個出ても、症状が無ければ、経過観察となります。

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  何もベースに問題なければ・・・・です。

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  さて、この症例です。

  ACSです。その急性期です。不整脈が全く出ていなくても、VT/Vf出現のリスクを持ちます。二段脈だから安心だ、は通用しません。

  そしてよく見ると、このPVCは、二段脈となっております。

  (右端のERの波形と比較すると、T波にPVCが乗っているが、よく分かります)

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Ecg2837icuweb


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は、R on T でPVCが発生してることを示します。

は、PVCによる逆行性P波です。

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  これは、ヤバイよね、と思うべきです。見かけが良くても、ICUを出ることが出来ません。

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* 右脚ブロックパターンなので、PVC起源は左室側。

* II, III, aVFで、PVCはQSパターンなので左室の下部が起源。

V5,6のPVCは、ほぼQSパターンなので、側壁側が起源。

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  左室側壁下部からのPVC出現と、思われます。

  すでに、β-blockerは投与開始しており、低カリウム血症を、補正で避けました。

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  でも、次のようになってしまいました。

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Ecg2838vticuweb


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   見事なVTです。

   波形は、二段脈のPVCとほぼ同じですね。左室側壁下部が起源でしょう。

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   アミオダロンとMgSO4を投与しました。治るのにけっこう時間が掛かりました。  

   アブレーションの専門家からは、ACS時のVTでは、フォーカスがまだ定まらないので=急性期の虚血部位は変動します=今は出来ません sorry。とのコメントを頂きました。

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   この症例は、対側のLADへのPCIもありました。いろいろ他のドラマもあったのですが、今回は略させて頂きます。

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  今回の教訓

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【 ACS時の二段脈は、その後の展開に要注意 】

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【 心疾患を持った  R on T は、本当に危険です! 】

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2015_9_27_2

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コメント

心電図勉強中の者です
肢誘導での軸偏位と胸部誘導での時計回転・反時計回転の事ですが、分からないのでご教授頂けましたら幸いです。
Ⅰ誘導、aVf誘導でQRSがマイナス、V1〜6誘導で下向きのQRSの心電図(QRS幅は正常)はどういう風に理解をしたら良いのでしょうか?お忙しいところ、申し訳ありませんがよろしくお願いします。

 ご質問、ありがとうございます、
 実波形がないので、想像力と理論でお答えします。

* I 誘導で、QRSがマイナス。(左右の上肢の電極つけ間違えと、右胸心は、無いとして。。)
 右軸偏位ですね。右室負荷(圧 or/and 容量)を、考えます。

* 胸部誘導全部で、rS patternだとすると、ものすごく右室が大きくなっているのでは?
 (右室がとても拡大すると、左室の興奮はV7-9位で無いとR波になりません。)

 よって、先天性心疾患(ASD等)が成人になった場合に、ありそうです。
 胸部レントゲンでは、いかにもと云う心拡大・肺動脈拡大があり、心エコーで一発で確定診断となります。
  →aVFのマイナスは、を無理矢理に説明すると、強力な右軸偏位と心の回転です。


 別の解釈を、してみます。

◎ 横隔膜が下がって、心臓は垂直位です。 電気軸は下を向きます。 I 誘導で、マイナスとなりやすい。
  但し、低電位のはずです。

◎ Psuedo-MI patternで、胸部誘導がrS patternとなります。

◎ 1〜2肋間下げで、胸部誘導を記録すると、普通の電位に胸部は戻ります。

  →胸部レントゲンで、COPD様の変化がないか?横隔膜が低位なってないか、確認して下さい。
  →この解釈の欠点は、aVFがマイナスの説明が、難しいことです。


 その他の鑑別として、

* 左肺の気胸! のんびり出来ませんね。

* 反復する肺塞栓症での、肺高血圧症。

* 広範囲の心筋虚血・拡張型心筋症 (心エコーで、ぜんぜん左室が動いてないはずです)

* やせた女性。たぶん、見かけは正常。

 などなど、考えました。

 この場合のポイントとして、心電図だけで考えないことです。
 (解釈のできない)心電図なんて、いくらでもあります。
 患者さんを見て・触って(触診)・聴いて(聴診)・聞いて(病歴問診)、情報を集めて下さい。
 可能であれば、胸部レントゲン・心エコーです。贅沢できれば、Coro/Sag含めた胸部CTとなります。

 確定診断がついて、後から見直すと、心電図が何を語りかけていたのかが、分かります。

 以上、長々と、なりました。
 ご参考になれば、幸いです。

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